「コンクリートから人へ」で進む日本列島のインフラ荒廃化
茨城県鉾田市と行方市を結ぶ鹿行(ろっこう)大橋の中央約60メートルが落ち、霞ケ浦に沈んでいる――5月10日の報道ステーションの特集「全国でインフラ老朽危機」で、無残な鹿行大橋の姿が映し出されました。
鹿行大橋(長さ404メートル)が落ちたのは、東日本大震災が起こった昨年3月11日。走行中の車1台が転落し、運転していた男性が死亡しました。震度は6強でした。
鹿行大橋は建設から43年。橋脚は揺れで変形しやすく耐震性が低い構造でしたが、橋を管理する県の「点検」は職員が車の中から見るだけ。震災1週間前にも目視はしていましたが、結果は「異常なし」でした。(4/30 毎日「進む橋の老朽化 膨らむ財政不安」⇒http://goo.gl/nviwZ)
鹿行大橋の崩落は地震がきっかけであったとは言え、根本的な原因は橋梁の老朽化と見られています。
日本の橋梁は「寿命」と言わている50年を越えるものが、現在は8%ですが、10年後には26%、20年後には53%になります。(5/1 朝日「橋や道路、迫る寿命 膨らむインフラ補修費」)
老朽化等により通行規制を受けた橋は2008年から3年間で680から1129に増えています。京大大学院の藤井聡教授は「いつどこで橋が落ちる事故が起きても不思議ではない」と指摘。実際、2007年には香川県、昨年は高知県で橋が落ちています。(同上)
老朽化に起因する落橋事故は、日本より早くインフラ整備がなされたアメリカでは既に起き続けています。
最初の落橋事故が起こったのは1967年。ウェストバージニア州とオハイオ州を結ぶシルバー橋(橋齢40年弱)が老朽化により落橋し、通行者46名が死亡する大惨事となりました。(根本祐二著『朽ちるインフラ』日経新聞社⇒http://goo.gl/ywBei)
当時のジョンソン大統領(民主党)は貧困対策として、バラマキ政策に次々と予算を充てる一方、橋や道路への投資は後回しにし、事態の更なる悪化を招きました。
「コンクリートから人へ」を掲げている日本の民主党も同様の過ちを犯しており、結果的に「人の命」を危険に晒しています。
その後も、アメリカでは築40年を経過した橋の崩落事故が続いています。直近では2007年、ミネソタ州の橋がラッシュアワー時に、わずか5秒間というスピードで完全崩落。死者・行方不明者13名、重軽傷者80名にのぼる大惨事となりました。(同上)
この橋が建設されたのは1967年ですが、日本では1964年の東京オリンピック前後に建設ラッシュとなり、その時期に建設された膨大なインフラが老朽化し、耐用年数を迎えようとしています。(参考:5/9 テレ朝「老朽化した首都高改修問題」⇒http://goo.gl/AxKC9)
そのため、今後、耐用年数を迎えたインフラの維持管理・更新費は2040年に現在の約5倍に達します。このままでは、2040年には維持管理・更新で公共投資予算を使い切り、インフラの新設はできなくなります。(4/15 日経「このままでは更新費用が急増へ」⇒http://goo.gl/wGE8G)
現在、日本経済の成長と共に建設された膨大なインフラの耐用年数が迫る一方、政府や自治体は財政難で維持管理や更新が困難な状況にあります。しかし、このまま放置すれば、橋の崩壊や道路の荒廃など、既に海外で起きていることが日本でも起こります。
東洋大教の根本祐二教授は「ゆっくりと震災が起きているようなもの。問題が起きたときに対応しても手遅れで、直ちに動き出すべきだ」と指摘しています。(4/15 日経「インフラ高齢化にどう対応」⇒http://goo.gl/lEZvq)
経費削減のためには、増税ではなく、従来、「官」の仕事とされていた道路、橋梁等のインフラの維持管理を民間に委託するような大胆な発想の転換が必要です。
例えば、北海道の清里町と大空町は、市町村が管理する道路や河川の維持業務を民間企業に委託。舗装の穴埋め補修や除雪、作工物の修理などの業務を民間に一括委託し、維持補修費の約25%削減に成功しています。⇒http://goo.gl/ua0Qp
高度経済成長期に人類史上最速で進んで来た日本のインフラの多くが、間もなく築後約50年を迎えます。その結果、人類史上最速のスピードで日本に「インフラ老朽化」問題が襲って来ることは避けられない「現実」です。
世界最高速の少子高齢化やインフラ老朽化を含め、どの国も経験したことがない課題に直面している「課題先進国・日本」は、今こそ、大胆な発想の転換と不屈のチャレンジ精神、高度な技術革新によって次々と課題を克服し、世界の危機を救うリーダー国家となるべきです。
欧州で「緊縮財政」批判強まる――野田政権の《超》緊縮財政の危険性
欧州では、経済危機脱却に向けて進められている財政再建優先の「緊縮財政(増税や歳出削減等)」に対する批判が強まっています。
5月3日付の日経は「欧州、成長にも目配り 緊縮策と両立狙う 来月末に戦略 独仏中心に調整」という記事を掲載しています。この記事のポイントは以下の4点です。⇒http://goo.gl/mifrf
・欧州では、債務危機で各国が「緊縮財政」を進めているが、それが重荷になり、2011年10~12月のユーロ圏の実質GDPは10四半期ぶりにマイナス成長に陥ったほか、失業率も10%を超え、過去最悪の水準に至った。
・緊縮財政で経済成長率が低迷し、財政が悪化し続ける悪循環に陥る恐れもある。各国では緊縮財政に抗議するデモが頻発。オランダでは財政赤字削減策を巡る連立与党内の協議が決裂し、内閣が総辞職する事態に至った。
・域内の国民は「緊縮財政疲れ」を起こしている。IMFは「赤字削減目標によって、成長が損なわれるべきではない」として、経済成長をてこ入れするよう勧告した。
・欧州で、成長戦略構想のきっかけになったのが仏大統領選の最有力候補、オランド氏の主張。同氏は財政規律を強化するEUの新条約を見直し、成長や雇用に配慮する条項を盛り込むよう提案している。
欧州で緊縮財政の見直しが強まっている背景には、緊縮財政を進めているスペインが景気後退に突入したことが挙げられます。(4/30 ロイター「スペイン景気後退突入、緊縮財政推進に疑問も」⇒http://goo.gl/DqKvT)
また、ルーマニアでも4月27日、ウングレアーヌ政権の緊縮財政に反対する世論の高まりを背景に、内閣不信任案が可決されました。(4/28 毎日「ルーマニア:内閣不信任案を可決…緊縮財政批判受け」⇒http://goo.gl/pV46R)
ILO(国際労働機関)も、4月29日、信用不安に揺れるヨーロッパを中心とした先進国の緊縮財政が、雇用の回復に悪影響を及ぼすとして警鐘を鳴らしています。
ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン氏は、失業率が悲惨なまでに高かったにもかかわらず、財政赤字削減を主張する欧米の政策エリートたちを「まるで古代のカルトの聖職者のようだ」と評し、「ギリシャやアイルランドでの緊縮財政計画の悲惨な結果を見るべきだ」と主張しています。
また、サマーズ元米財務長官や経済学者のブラッド・デロング教授は「ギリシャやポルトガルなど救済を受けた国々は厳しい緊縮策を遂行するしかないが、その他の国々が短期的に財政支出を削減すれば長期的な財政悪化を招く」と警告しています。(4/17 朝日「欧州債務危機、緊縮か成長か 単純な答え見つからず」⇒http://goo.gl/JpNMi)
※ただし、注意が必要なのは、成長議論も一様ではなく、仏大統領選でリードしている社会党のオランド候補の「成長・雇用政策」は、富裕層や投資所得、銀行に対する増税によって、補助金を付けて雇用を創出することを企図しており、日本の民主党の増税・バラマキ型の「大きな政府」に近いと言えます。
こうした欧州の迷走を受け、経済評論家の近藤駿介氏は「ユーロがこの数年実施してきた『緊縮財政一辺倒の財政再建』という壮大な実験が失敗に終わることが明白になった今でも、『ユーロの危機は対岸の火事ではない』『ユーロ化を防ぐ』と繰り返して来た野田政権は、失敗に終わることが明らかになったユーロの実験を繰り返すつもりなのだろうか」と疑問を呈しています。⇒http://goo.gl/sQhKv
消費税増税法案には「景気条項」が盛り込まれましたが、あくまで「努力目標」にとどまっており、野田政権の「経済成長を置き去りにした《超》緊縮財政一辺倒」では、欧州と同じ失敗を繰り返すことは避けられません。
幸福実現党は、無駄な歳出やバラマキ等の削減を打ち出すと共に、財政優先の緊縮財政の危険性を指摘。将来の税収増を見込める投資―インフラ、交通革命、未来産業等―への積極投資も経済政策の核として打ち出しています。
これは企業経営と同じです。経費削減も重要ですが、経費削減だけで、新規の投資をしなければ売上はジリ貧になります。企業の成長に向けては、未来に向けた戦略的投資が不可欠です。
ノーベル賞経済学者のスティグリッツ教授は「必要なのは―財政再建のためにも―緊縮政策ではなく、さらなる景気刺激策である。赤字を増大させる最も重要な要因は経済成長の弱さによる税収の伸び悩みであり、したがって最善の処方はアメリカを成長軌道に戻すことだ」と述べています。(「欧州とアメリカに互いに伝播する間違った考え」⇒http://goo.gl/JA4Dl)
増税は景気を悪化させ、税収を減らし、逆に財政危機を招きます。財政再建のためにも、増税ではなく、骨太の経済成長戦略が必要です。幸福実現党は断固、日本経済を沈没させる消費税増税法案を廃案に追い込んで参ります。
【拡散】明日5/3(祝)「憲法改正を求めるデモ&集会」開催!!
昨日5月1日、野田首相は、北朝鮮が先日のロケット発射に次いで、過去の例に倣って近い将来、核実験を行う「可能性が大きい」と述べました。(5/1 ウォール・ストリート・ジャーナル「北朝鮮は近い将来核実験行う可能性高い=野田首相」⇒http://goo.gl/Ow6Ya)
北朝鮮の核の小型化が完成すれば、いつでも日本に核ミサイルを打ち込める状態となり、わが国は危急存亡の時を迎えます。(参照:[HRPニュースファイル259]迫り来る北朝鮮の3回目の核実験――憲法改正に向け、「最後の決断」の時⇒http://goo.gl/iocm0)
日本国民の生命・安全・財産を守るためには、日米同盟をさらに強化・深化させるとともに、日本国憲法第9条を早急に改正し、中国・北朝鮮の軍事的脅威と対峙しうる国防体制の強化が急務です。
つきましては、幸福実現党は憲法記念日の明日5月3日(木・祝)、「憲法を変えて日本とアジアの自由を守る!国民集会&デモ」を東京・日比谷で協賛開催し、全国に憲法改正のうねりを起こして参ります!⇒http://goo.gl/zq8Dn
★登壇予定者
小林節氏(慶應義塾大学教授、著書に『憲法守って国滅ぶ』他多数)
惠隆之介氏(拓殖大学客員教授、元海上自衛官、著書に『海の武士道』他多数)
鳴霞氏(「月刊中国」主幹、著書に『中国人民解放軍の正体 平和ボケ日本人への警告』)
トゥール・ムハメット氏(中央アジア研究所代表兼研究員、ウイグルの人権活動家)
オルホノド・ダイチン氏(モンゴル自由連盟党幹事長、自由モンゴル編集長)
ついき秀学氏(幸福実現党党首)ほか
★「プレイベント」のお知らせ
5月3日当日の「国民集会&デモ」は13時より開演致しますが、その前に12時20分から「プレイベント」を実施します!!
プレイベントでは、最初にトークショー、ミニライブ等を行い、12時50分より10分間、ついき秀学党首が出演し、映画「特別映像」を撮影致します!
会場にお集まりの皆様にも、エキストラとして、ご参加頂く予定です!明日、会場にはどうぞお早めにお越しください!!
★〈寄せ書き〉ご協力のお願い
南モンゴル民主化運動の象徴的存在であるハダ氏が、2010年12月、刑務所から釈放された直後から中国政府に拘留された妻子と共に行方不明になっています。
また、「ハダ氏の釈放日にはお祝いをしよう」とモンゴル族に呼びかけた作家のホーチンフ女史も、違法に軟禁され、暴行を受けている写真がネット上に流出しています。
ハダ氏とその家族、ホーチンフ女史の釈放を求め、モンゴル族がいる全世界の国々で、民主化支援のメッセージを寄せ書きした大きな布を作る運動が進められています。5月3日当日の「国民集会&デモ」会場に〈巨大!寄せ書き〉を準備いたしますので、是非とも、ご協力ください!
本集会は、日本のみならず、アジアのすべての方々の「自由」を守るための戦いです!お一人でも多くの方のご参加をお待ちしております!
【開催日時】5月3日(木・祝)12時00分開場・13時00分開演
【場所】日比谷公園大音楽堂
【デモコース】日比谷公園大音楽堂→虎ノ門→溜池山王→六本木→流れ解散
【チラシダウンロード(PDF)】http://goo.gl/Mm5Us
持ち物等:お持ち頂ける方は、プラカードをお持ちください。
※雨天決行します!必要な場合は雨具をご用意下さい。
【主催団体】「中国の脅威から子供の未来を守る会」連絡先080-3411-3448(事務局)
迫りくる首都直下地震――「防災大国ニッポン」を目指せ!
日本は火山列島であり、マグマの上に浮かんでいる国です。東大震研究所は今年1月、首都圏でM7級の直下型地震が4年以内に70%の確率で起きる可能性があるとの予測を発表しています(⇒http://goo.gl/fsgZv)。首都圏の防災対策は急務です。
東京都防災会議は4月18日、地震被害想定を6年ぶりに更新し、首都直下地震が起これば、都内の建物の約1割に相当する30万棟が全壊・焼失し、約9,700人が死亡するとの予測を発表しました。(4/18毎日「首都直下地震:最大死者9700人 都防災会議想定見直し」⇒http://goo.gl/v6VsG)
東京の防災上の最大の弱点が「火災」であることは「江戸」の頃より変わりません。死者の4割強、建物被害の6割強を火災被害が占めると予測されています。
その理由は、23区西部や南西部、東部の下町を中心に、約1万6千ヘクタールの木造の家屋がひしめく「木造住宅密集地」、いわゆる「木密(もくみつ)」が広がっていることにあります。(4/20 朝日社説「首都直下地震―燃えない街への工夫を」)
木密では山手線の内側2個分もの土地に150万世帯が暮らしています。木密は戦後、東京の都市整備がなされないまま、急激な人口増加に伴う敷地の細分化、建物の高密化等が進んだために形成されて来ました。先進国の諸都市と比べても防災対策は非常に脆弱な状況にあります。
木密では地震で倒壊する家屋が多いのみならず、一旦、火災が起きれば、火は一気に燃え広がります。狭い道路や行き止まり、未接道敷地が多く、消防車が駆けつけにくい上、大地震で大渋滞や道路の寸断、建造物の崩壊等があった場合、消防車が駆けつけることは極めて困難です。
街の防火対策には、延焼を防止するための広幅道路や公園等の整備、耐火住宅への建て替えが急務ですが、木密の街では高齢化が急速に進展しており、高齢者の方々は建て替えや引越しを厭うケースが多く、防火対策が進んでいないのが現状です。
木密の居住者の中は「地震や火災が来たらあきらめる」と自己責任を主張する方もいらっしゃいますが、自らのみならず、延焼の拡大によって多くの人々をも火災に巻き込むことを考えれば、「公共の福祉」の観点から、ある程度の私権制限はやむを得ないと考えます。
政府や都はこれまで「自己責任論」の立場を重視し、私権制限に慎重な立場で木密を放置して来ましたが、東日本大震災を受け、東京都は方針を一転し、今年1月、耐火住宅への建て替えを強制的に進める「木密地域不燃化10年プロジェクト」を打ち出しました。⇒http://goo.gl/Il0qr
具体的には、都は「特区」に指定したエリアで建て替え助成金をアップし、固定資産税を減免する一方、建て替えに同意しない人がいても土地収用法に基づく強制収用を適用し、延焼防止のため道路も広げる予定です。(4/19 読売「首都地震、都が強制収用も…不燃対策に私権の壁」⇒http://goo.gl/mRbmk)
平時においては、政府・行政機関による「私権制限」は慎重であるべきですが、防災・復興に向けては政府や自治体は「事なかれ主義」で逃げることなく、住民に対して十分に説明責任を果たした上で、迅速かつ柔軟な防災インフラの整備を推し進めるべです。
また、首都の防災機能を高めると共に、東京の国家機能のバックアップとなる「副首都」を関西圏等の適地に建設し、巨大災害で日本列島が政経両面で即死状態にならないような国家ビジョンの検討が急務です。(参照:WEDGE2012年5月号 小川和久著「東日本大震災の反省を踏まえ、副首都構想を推進すべし」)
民主党は「コンクリートから人へ」を掲げていますが、日本列島は常に地震や火山活動などの巨大災害に見舞われる可能性に直面しているため、強固な防災インフラの整備が急務です。
その財源は景気を悪化させる安易な増税によるのではなく、デフレ克服を兼ねた国債の日銀引き受けや、PFI等を活用した民間資金を用い、強力なリーダーシップで「防災大国ニッポン」を築いていくべきです。
自衛隊のフィリピン分散配置――政府に戦略はあるのか?
在日米軍再編見直しにからみ、米海兵隊と自衛隊がフィリピンの訓練施設を共同使用する方向で日本政府とアメリカ政府が検討を始めたことが分かりました。(4/24産経「自衛隊がフィリピン基地使用 日米が検討開始、パラワン島有力」⇒http://goo.gl/xzcNB)
報道によると、共同使用する施設は、パラワン島のフィリピン海、空軍基地が有力で、ルソン島の基地も候補として挙がっています。
日米両政府は米自治領・北マリアナ諸島のテニアンの米軍基地を自衛隊が共同使用することでも合意しており、アジア・太平洋地域で複数の基地を共同使用することで、海洋進出を図る中国を牽制するのが狙いです。
アメリカ政府は在沖縄アメリカ海兵隊を移転し、ハワイ、グアム、オーストラリアのダーウィンを巡回する「ローテーション配置」の拠点の一つとしてフィリピンを検討しており、フィリピン政府と交渉中ということです。
日本とアメリカがフィリピンの訓練施設共同使用の検討を始めたのは、アメリカ軍、自衛隊を分散配置することで、中国などによる第一撃を受けた後も反撃できる「抗堪性(こうたんせい;敵からの攻撃に耐えて機能を維持する能力)」を強化することを目的としています。
しかし、アメリカ軍の分散配置は戦略的に意味がありますが、自衛隊の分散配置については一定の疑問が残ります。
アメリカと違って、日本全土が中国に隣接しているため、第一撃が致命傷につながりかねないからです。
中国がアメリカ本土を直接攻撃するためには大陸間弾道ミサイル(ICBM)を使用する必要があり、中国にとって使用には非常なリスクを伴います。
しかし、日本を攻撃するためなら、中距離弾道ミサイル(IRBM/MRBM)を始めとして爆撃機、戦闘機、潜水艦などを使うことができ、アメリカを攻撃するよりもリスクは少なくて済みます。
中国が推進している接近阻止・領域拒否(Anti-Access/AreaDenial,A2AD)戦略は、アメリカの本土を攻撃するのではなく、アメリカの同盟国にある基地や移動しているアメリカ海軍の空母打撃群、遠征打撃群を攻撃して、アメリカ軍の接近を拒否して中国の本土を守ろうとする一連の戦略システムです。
アメリカ統合参謀本部が発表し、実質的に推進している新しいコンセプトであるJoint Operational Access Concept(海上自衛隊仮訳⇒http://goo.gl/1jCuo)は、そういった中国の戦略を排除し、任務達成に十分な行動の自由を有した状態で軍隊を作戦区域に投入する能力です。
そこで目指されているものは、アメリカ軍の行動の自由を確保することに尽きます。中国人民解放軍はアメリカ軍が強大であることを知っており、その隙をついて攻撃しようとしているので、その隙を無くすということなのです。
このようなアメリカの一連の動きは中国の戦略に対する抑止となりますが、日本が自衛隊をフィリピンやテニアン島などに出すことは、日本を守るはずの自衛隊の一部を日本から引き離すことを意味するため、日本本土の防衛力とのトレードオフ関係を考慮に入れる必要があります。
もし、日本が主体的に国際社会で貢献するという意志と戦略が備わっており、日米同盟を中核として中国包囲網を築いていくという政府の強い意志があるならば、この動きは、日本の国防にとってもプラスに働くでしょう。
しかし、ただ単に、民主党政権が普天間基地移設問題でこじれてしまったアメリカのご機嫌をとるために、「米軍の言うことは何でも従います」という発想で、戦略なく自衛隊をフィリピンに送るのであれば、シーレーン防衛はおろか、日本自体を防衛することが困難になって来ることを意味します。政府に戦略はあるのか、野田首相に問いたいと思います。



